自動詞 & 他動詞
初級文型の中には使い分けがとても難しいものがあります。その代表的なものをこの資料編で取り上げました。これらは機能別にグループとして理解するのが一番の早道です。特にこの資料編が取り上げた1~5の項目は学習者から一番多く質問が寄せられる項目であり、それだけ使い分けが難しいところです。その使い分けを表にしてありますから、参考にしてください。 なお本辞典は主として初級修了者を対象としていますが、中級文型に入る前に、この資料編に目を通されたらいかがでしょうか。中級文型は初級文型が土台となって組み立てられています。つまり、初級文型を木の幹とすれば、中級文型は幹から生まれた枝の関係にあります。日本語の文法の体系的な理解に避けて通れないのが、この資料編が取り上げた項目でしょう。また、「よく使われる口語文型」を資料として載せておきましたから、会話部や例文部を読みながら、「あれっ?」と思ったら、「よく使われる口語文型」を見てください。
1 自動詞と他動詞1、 自動詞と他動詞の使い分けと分類
「~ている」「~てある」「~ておく」の使い方を理解するには、日本語の自動詞と他動詞の理解が必要です。先ずそこから始めましょう。
一つの現象は、動作している人に注目するか、動作の対象物に注目するかで、二通りの言い方ができるでしょう。対の自動詞と他動詞があるとき、動作している人に注目すれば他動詞を使い、動作の対象物に注目すれば自動詞を使うというのが大原則です。例えば、それを使い分けた例文は以下のようです。
危ない!上から瓶が落ちて(自V)きた。誰が瓶を落とした(他V)んだろう。 部屋が暗いので、わたしは電気をつけた(他V)。しかし、電気がつかなかった(自V)。 窓を閉めよう(他V)としたが、窓が閉まらなかった(自V)。
わかりやすく言えば、人を見てその動作を
言うときは他動詞を使い、物を見てその状態・
現象を言うときは自動詞を使います。
ただ、ここには文化の違いがあって、例ば魚を釣ったとき、日本人は「魚が釣れた」自動詞を使うのに、中国の人は「魚を釣ったと他動詞を使うと聞きました。また、
日本人は「お茶が入りました。どうぞ」と言いますが中国の人は、「お茶を入れました(倒茶)。どうぞ」と言います。これは文化の違いであり、人意志や行為を重視する中国語に対して、日本人は他動詞を使うと人の意図・意志が表れ、手に好意を押しつける感じがするため、他動詞の使用を避けるわけです。中国の人が日本語の自動詞と他動詞の使い分けが難しいと感じる原因には、この文化の違いがあるようです。
「~ている」「~てある」「~ておく」の使い方を理解するために必要な分類は、他動詞、自詞繹オ(人が主語)、自動詞(物が主語)の三分類です。人が主語の動詞は意志がありますから、他動詞や自動詞(例:走る/歩く/泣く/寝る…)は、文末で「~たい・~つもりだ・~なければならない」や意向形(「~(よ)う」)が使えますが、物が主語の自動詞(例:降る/開く/落ちる/つく…)はそれができません。つまり、人の動作を表す他動詞と自動詞は意志のある継続動詞で、自動詞は物の状態を表す動詞で無意志動詞(多くは瞬間動詞)だということがわかります。なお、ほとんどの自動詞は物が主語の自動詞です。 ただ例外があって、人が主語になる他動詞でも「~を吐く・(下痢・咳)をする・~を感じる~を嘆く・~を嫌う」などの感情や生理を表す動詞は意志表現が使えませんが、意味から考えればわかるでしょう。
私は 寝たいです。 <自動詞繹オ>
寝るつもりです。
雨が 降りたいです。(?) <自動詞繹シ>
降るるつもりです。(?)
会話でよく使う対の他動詞・自動詞
- 広
- 広める/広まる:知られるようにする/なる・(見聞の)範囲を/が大きくする/なる
- 広げる/広がる:幅・面積・空間を/が大きくする/なる
- 浮
- 浮く/(浮かす):表面に出てくる・余分が出る
- 浮かぶ/浮かべる:漂っている/漂わせる
- 縮
- 縮む/縮める:小さくなる/する
- 縮れる/(なし):小さくなって変形する
- 剥